新たに制作スタジオを兼ねたその場所で、
私は2か月間ひたすら曲を作り続けた。
来る日も来る日も、それはもういくつも、出尽くすまで限りなく。
冷静でいられなかった。
掻き乱れた心の内、出るものは全て出す…
だから、随分酷いものも出てきた。
ワンフレーズ、そこから進まず曲にならないものも沢山あった。
自分でも手に負えないほどの自分が出てこないと、強い表現は出てこない。
いつも本当に良い曲は自分でもわからないうちに一気に出来る。
その間感じているのは強烈な情動だけ。
頭を使う、計算して作る、悩む、そんなことしたらどんどん駄作になっていく、
それはアレンジの段階でやること、
ゼロから1にする時に使うべき力はそういうところではない。
もっと全然、理屈じゃないところ。
はっきりいって今回、自らの傷をえぐるような曲の作り方をした。
私は本当に、うんざりするくらい色々なことがうまく流せない性格で、
あれもこれももう、どうしたらいいかわからなくて…
それで楽器を弾く、歌う…そういうことの繰り返し。
混乱している自分、見失い過ぎている自分にメス
ぐちゃぐちゃの正体を取り出す
間違っているものは正したい
平気なフリなんてできない
本当の気持ちは何?
どうやったら前に進めるかな
何を持っていけばいいのかな
それが明確になるまでえぐりつづけた。
自分のことをしっかり見ようとしなければ、
生きることはそんなに難解ではないように思う。
でも、見なくてはならないし。それに嫌だって見えてしまう。
自分をちゃんと見て、ちゃんと受け止めなければいけない時がある。
歪んだものを治していかなきゃいけない時だってある。
少なくても私にとって「音楽を生み出す」とはそういう瞬間の連続で、
自分を確かめ続けることに他ならない。
えぐればえぐるほどそりゃぁダメな自分だって出てくる。
ただそれを適当に追い払うんじゃなくて、諦めてしまうんじゃなくって、
認めてあげた上で生かしていく、時には変えていく、
それが出来るか出来ないかって問題。あとは本当のらしさや良さを見失わないこと。
そうして自分のこと、穴があくほど見つめた果てになぜか、他人が見える-。
今回の曲作りは、そういう初めての経験をもたらした。
2ヶ月を費やして、大半は新曲で、
また今蘇らせるべき過去の音源も多少含めて、曲は出揃った。
選曲はあっという間に済んだ。
『必然しか選ばない、最高以外は全部外す』
ごくごくシンプルに。
私はそれをぐっと握り締めて、
音楽を共にしてくれる人へと会いに行く。
つづく