2010/10/21

第三回

やりたいと思って選んだ曲はどれも、
全パート人間が弾かなきゃだめだなというものばかりだった。
自分で弾けない楽器についてはプレーヤーが必要だなと思った。


とたんに行き詰った。


私はその頃 人と一緒に音楽をやることに対して とても億劫になっていた。
いろいろあった後で、人間不信が極まっていた。
しかしそういう閉塞的な自分を変えていかないと進まないことも承知していた。
なによりも新たな風を欲していた。
少なくとも、曲ができた時点で、
「こういう楽器でこういうプレーヤーでこういう音が必要」っていうのが明確にあって、
誰にお願いしたいかも心の内では決まっていたし、
あとはオファーを出すのみだった。玉砕覚悟で行くのみ。
信心第一。傷つくことを恐れている場合ではない。


そしていざ、
ドラフト一巡目に総当りした。(一巡目しかないけど。)
だいたい一緒にやりたいプレーヤーっていうのはその曲のそのパートに世界でたった一人、
恋愛みたいに君じゃなきゃだめだっていう一番しかない。二番とか、ない。
だから、好きだ!ええいどうしても音楽に付き合ってほしい!と思った相手、
初対面だろうと仲良くなかろうとお構い無しにオファーしていった。
『たとえ断られてもあまり傷つかない、傷つかないこと、傷つき過ぎないこと』
と、自分に念じながら…
(びびりー)


そしたらすんばらしいことに、
全曲全メンバー一巡で快諾してくれた!
!!!!!!!!!
こんなことがあっていいのかしら、と、ちょっと、よくわからなかった。
けれど、こればかりは、神に感謝しました。。


そこからはデータファイル交換したり、スタジオに入ったりしてアレンジを詰めていって…
私のアレンジに対する注文は、
非常に抽象的な映像の投げかけでありながらディティールはなかなか細かい。
しかし、本当に良いプレーヤーというのはこちらにどこまでも欲をかかせる力と、
それに応える力があって
みーんな見事に想像以上の音で応えてくれた。感動しちゃった。
やっぱり音楽楽しい!って思った。一緒にやってくれてとても嬉しい!って思った。
そうして気がついたらいろんなことが話せる仲間になっていた。
音楽や生き方について深い話ができる仲になったりもした。
スタジオの中でいっしょにニコニコしたり、ごはんを食べたり、
そういうことが私にとってはとても貴重で、たまらなく嬉しかった。
「よい曲じゃなきゃやらないですよー」
サクッとそう言ってくれたりして随分勇気にもなった。


みんなこれだけがんばってくれたんだから本当にいろんな人に聴いて欲しい!
これがよくないわけがない! 私は、やるぞ!歌がんばろう!
そういう前向きな気持ちと、眩しいこれからの道を与えてもらった。


しかし悲劇は起こる。



つづく