おかしなものをみた。
これがなんだかわかりますか?
長い地下道一帯の横脇にひたすら続く、
この変なオブジェみたいな立体物。
椅子を斜めにぶった切ったような。非常に妙な色形をして。
私はとてもおかしなもののような気がして、
何の意味があるんだろうこれは、と思って、
「これってなんですかね?」って 一緒にいた美大の先輩に聞いたら、
教えてくれた。
『ホームレスよけのために作ったんだって』
国か、都か、とにかくホームレスがたまらないように、作ったものらしい。
ここは屋根があってホームレスが溜まりやすいから、その対策に、
座ったり寝転がったり居座ったりできないように作ったというのだ。
あまりにも想像を絶するその答えに、私は混乱した。
なんということだろう?
なんという対策だろう!
おかしいだろう?
誰だこんなものを思いついたやつは。
作ったやつは。
許したやつは。
ものすごく悲しいのにものすごく腹が立って涙が出ない。
わかりにくいやり方で、
自分たちの都合で、弱者の居場所も命も追いやって、
最終的な責任はとっていただけるのだろうか。
似たような対策で、
ホームレスがたまらないようにと、
国や都道府県はとりたて必要の無い場所に歩行式エスカレーターを作ったりもするらしい。
邪魔なものが目の前からいなくなって
雨の日は雨に濡れれば満足か?
同じ人間なのに。
奪うなよ!奪うなよ!奪うなよ!
できるだけ私はピースフルでいたい。
心穏やかにいたい。
悲しんだり怒ったりするのは嫌だ。
でもこういうものに出会うたび体の中が煮えくりかえる。
想像力のない人や物事に出くわすたびに骨が震える。
理由はわかっても、事情がわかっても、絶対 間違ったことは許せない。
どうにかしなければと思う。
しかし己の身の丈でできることは至極限られている。
どうすれば最善策?
答えは簡単に見つからない。
しかし見て見ぬふりも、忘れることもできない。